男たちと母親たちと女たち
たまに思い返しては腹が立つ言葉というのがある。たとえば、智己くん(仮名)が私に言った「満たされれば性欲も落ち着くよ」
正確な言い回しは忘れてしまったが、智己くんは当時遊び呆けていた私をつかまえて、「愛情を知れば、
今でも思い出す度に腹が立つ、とまでは言わないが、
性に奔放なのは本当の愛を知らないからだ、か。男も、
男は、「性欲」
智己くんは、ジェンダーレスな整った顔立ちで、都内の有名私立大学を卒業後、外資系のコンサルティングファームに勤務していた。当時は、まだ20代半ばだったけれど、
きっと女性からは引く手数多だったろうに、
智己くんは、雪の深い地域でシングルマザーのお母さんに育てられた。
彼の母親は、薄暗いアパートに毎日違う男を連れ込んでいた。
年上の女でないと駄目だという彼が、
とりわけ奔放だった私は、(そしてまさに当時の母親の年齢だったという私は)
私を「改心」させられれば、
なぜ男たちは母親と同じような問題を抱えた女と一緒になってしまうのだろう。
片付けができない母親のせいで、
そういえば私の男も家事のできない母親と同じように、生活能力のな
育児放棄と言えるような環境で、幼い頃から炊事を強いられてきたのだから、
かわいそうな男たち。